DLSS Enablerって何?
NVIDIAのDLSSには「マルチフレーム生成(MFG)」という機能があります。これは本来レンダリングされたフレームの間に、AIが中間フレームを複数枚生成して、見かけ上のフレームレートを大幅に引き上げる技術です。
ただしこのマルチフレーム生成、NVIDIAはRTX 50シリーズ専用として提供しているんですよね。RTX 40シリーズですら公式には使えません。

そこで登場するのがDLSS Enablerです。これは有志のmodder「artur07305」氏が開発したコミュニティ製のMODツールで、本来RTX 50シリーズでしか使えないマルチフレーム生成を、他のGPUでも疑似的に動かせるようにしてくれます。
GPU側の条件としてはDirectX 12に対応していること。DirectX 12というのはWindows上でゲームのグラフィックを処理するための仕組みのことで、ここ数年で販売されたGPUならほぼ全てが対応しています。NVIDIAだけでなく、AMDやIntelのGPUでも使えます。
もう一つ大事な条件があって、ゲーム側がDLSS 2(Super Resolution)またはDLSS 3(Frame Generation)にネイティブ対応している必要があります。DLSS Enablerはゲーム内のDLSS実装を「乗っ取る」形で動作するので、そもそもゲームにDLSSの仕組みが入っていないと機能しません。
DLSS Enablerはあくまで「エミュレーション(疑似的な再現)」であり、RTX 50シリーズ上でネイティブに動作するDLSS MFGとは品質に差があります。この点は理解した上で使いましょう。
何ができるの?主な機能の紹介

WQHD グラフィック高設定
DLSS Enablerには複数の機能が搭載されています。主なものを紹介します。
マルチフレーム生成(MFG X2〜X6)
最大の目玉機能です。通常のフレーム生成は「1フレーム追加して2倍にする」というものですが、DLSS Enablerではその上のX3(3倍)、X4(4倍)、X5(5倍)、X6(6倍)まで対応しています。
たとえばベースが60FPSのゲームにX3をかければ180FPS、X4なら240FPSという具合に、見かけ上のフレームレートを大幅に引き上げられます。
Adaptive Frame Generation(適応型フレーム生成)
指定したFPS以下に落ちたときだけフレーム生成を自動で有効にする機能です。「普段は必要ないけど重いシーンだけ助けてほしい」という使い方ができます。
Screen Space Ray Tracing(SSRT)
フレーム生成とは別の機能ですが、レイトレーシング非対応のDX12ゲームでも、擬似的にレイトレーシング風のグローバルイルミネーション(間接照明)を追加できるベータ機能も搭載されています。
| 機能 | 内容 | 対応条件 |
|---|---|---|
| マルチフレーム生成 | X2〜X6までの多段フレーム補間 | DLSS 4 MFG対応タイトル + DX12 GPU |
| 通常フレーム生成(2x) | 1フレーム追加の基本的なFG | DLSS 3対応タイトル + DX12 GPU |
| Adaptive Frame Generation | FPS低下時のみ自動でフレーム生成ON | DX12 GPU |
| Screen Space Ray Tracing | 擬似レイトレーシング照明(ベータ) | DX12 GPU |
FSR 3.1のフレーム生成とどう違うの?
ここが一番気になるポイントだと思います。「フレーム生成ならAMDのFSR 3.1でも使えるじゃん」って思いますよね。
たしかにFSR 3.1のフレーム生成はオープンな技術で、GPUメーカーを問わず使えます。
RTX 20シリーズや30シリーズのユーザーでも、対応タイトルであればFSR 3.1でフレーム生成を有効にできます。すでに活用している方も多いんじゃないでしょうか。
ただし、FSR 3.1のフレーム生成は1フレーム追加の2x(2倍)止まりなんですよね。
つまり「FSR 3.1の2倍じゃ物足りない、もっとフレームレートを伸ばしたい」という場合に、DLSS Enablerが選択肢に入ってくるわけです。
| 比較項目 | FSR 3.1 フレーム生成 | DLSS Enabler |
|---|---|---|
| フレーム生成の倍率 | 2x(1フレーム追加)のみ | X2〜X6まで対応(MFGはX3以上) |
| 提供元 | AMD公式 | コミュニティ製MOD |
| ゲーム側の条件 | FSR 3.1 FG対応タイトル | 基本:DLSS 2/3対応 / MFG:DLSS 4 MFG対応 |
| 安定性 | ゲーム開発者が正式に組み込むため高い | MODなのでゲームのアプデで動かなくなる可能性あり |
| 対応GPU | DX11/DX12対応GPU全般 | DX12対応GPU全般 |
| 導入の手軽さ | ゲーム内設定からON/OFFするだけ | MODのインストールが必要 |
| 画質 | 公式実装なので比較的安定 | エミュレーションのため本家より劣る場合がある |
| アップスケーラーとの併用 | XeSSやDLSS SRと組み合わせ可能 | DLSSアップスケーリングと組み合わせ可能 |
霊夢つまり、FSR 3.1の2倍フレーム生成で満足しているなら無理にDLSS Enablerを入れる必要はないってことね
魔理沙じゃあどんなやつが使うべきなんだ?
霊夢「2倍じゃ足りない、もっとフレームレートを盛りたい」って思ってるユーザーね。特に高リフレッシュレートのモニターを使っていて、144Hzとか240Hzをしっかり活かしたいって人にはかなり刺さる機能よ
魔理沙なるほど、目的がハッキリしてるやつ向けってことだな!
自分のGPUでどこまでいけるの?ランク別の目安
DLSS EnablerはDX12対応GPUであれば動作しますが、快適に使えるかどうかはGPUの性能次第です。ここが非常に重要なポイントなんですよね。
なぜかというと、マルチフレーム生成はあくまで「元のフレームを参考にして中間フレームをAIで生成する」仕組みなので、元のフレームレート(ベースFPS)が低いと生成されたフレームの品質が大幅に下がるんです。具体的にはキャラクターの輪郭がチラつく、残像が出る、UIが二重にブレるといった映像の崩れが発生します。
目安として、ベースフレームレートが60FPS以上あるのが理想です。40〜50FPS程度でも動かすこと自体は可能ですが、映像の崩れやレイテンシの増加が気になりやすくなります。30FPS未満での使用は避けた方が無難です。
| GPU | ベースFPSの目安(1080p) | 推奨MFG倍率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| RTX 4090 | 100FPS以上 | X5〜X6 | ベースが十分高く、高倍率でも映像の崩れが出にくい |
| RTX 4080 / 4070 Ti Super | 80〜100FPS | X4〜X5 | 余裕をもってマルチフレーム生成を活用できる |
| RTX 3060 Ti / 3070 | 60〜80FPS | X2〜X3 | 理想的なベースFPSを確保しやすく、コスパの良いゾーン |
| RTX 3060 / 2060 Super | 50〜60FPS | X2 | DLSSアップスケーリング併用でベースを確保してから使うのがコツ |
| GTX 1080 / 1070 | 30〜40FPS | △ 厳しい | ベースが低すぎて映像の崩れが目立ちやすい |
| GTX 1060以下 | 20〜30FPS | ✕ 非推奨 | フレーム数は増えるが体験としてはガタガタになりやすい |
※上記はDLSSアップスケーリングやFSR併用を前提とした、最新AAAタイトルでのおおよその目安です。軽いタイトルならもう少し余裕が出ます。
RTX 20/30シリーズにはTensor Coreが搭載されているので、ネイティブのDLSS Super Resolution(アップスケーリング)を併用できます。これでまずベースFPSを引き上げてから、DLSS EnablerのMFGを乗せるという二段構えが効果的です。GTX 10シリーズにはTensor Coreがないので、アップスケーリングにはFSRやXeSSを使うことになります。
霊夢海外の検証動画でも「RTX 20/30シリーズは無理に6倍にしないで3倍程度に抑えておくとレイテンシも抑えられて快適」という見解が多かったわね
魔理沙RTX 40シリーズだと5倍6倍でもいけるって話だったよな?
霊夢そうね、特にRTX 4080以上はベースフレームレートが十分に高いから、高倍率でも中間フレームの予測精度が保たれやすいの。倍率を上げるほど入力遅延(レイテンシ)も増えるんだけど、NVIDIAのReflex系の低遅延技術と併用すれば実用圏内に収まるよ
なるほど、自分のGPUに合った倍率で使うのが大事ってことだな
導入方法
DLSS Enablerの導入手順を、実際のインストーラー画面に沿って解説します。
1. ダウンロード

GitHubの公式リリースページから最新のインストーラー(.exe)をダウンロードしてください。
- GitHub:https://github.com/artur-graniszewski/DLSS-Enabler/releases
ページ上部にある最新バージョンの「Assets」セクションから、.exe形式のインストーラーを選んでダウンロードします。
2. インストーラーを起動
ダウンロードした.exeを実行します。ライセンス画面などを進めると、最初にインストール先フォルダを指定する画面が表示されます。
3. インストール先の指定(最重要ポイント)
【超重要】ここが一番間違えやすい部分です!!

DLSS Enablerは「DLSSを有効にしたいゲーム」1本ごとに個別にインストールするMODなんです。PCに1回入れれば全ゲームに対応する、というタイプのソフトではありません。
なので、インストール先フォルダとして指定するのは「DLSS Enablerを使いたいゲームの.exeがあるフォルダ」になります。他の場所に入れても意味がないので注意してください。
※今回はプラグマタで試してみます。
ゲームの.exeがあるフォルダの探し方
Steamのゲームを例にすると、以下の手順で見つけられます。
- Steamライブラリで対象ゲームを右クリック → 「管理」→「ローカルファイルを閲覧」
- 開いたフォルダの中に.exeファイルがあれば、そこがインストール先
- .exeが見当たらない場合は、フォルダ内の
bin、bin64、Binaries\Win64などのサブフォルダを確認
実際のゲームでの例をいくつか挙げておきます。
| ゲーム | .exeがある場所 |
|---|---|
| Cyberpunk 2077 | ...\Cyberpunk 2077\bin\x64\ |
| Crimson Desert | ...\Crimson Desert\bin64\ |
| Resident Evil Requiem | ゲームのルートフォルダ直下 |
| 多くのUnreal Engineゲーム | ...\ゲーム名\Binaries\Win64\ |
ゲームによって構成が異なるので、「このゲームで起動に使われている.exeはどれか?」を確認してからインストール先を指定してください。
複数のゲームで使いたい場合
複数のゲームでDLSS Enablerを使いたい場合は、ゲームごとに毎回インストーラーを実行して、それぞれのゲームフォルダに個別にインストールする必要があります。面倒に感じるかもしれませんが、ゲームごとに最適な設定が異なるため、この仕様になっています。
インストール先を指定してNextを押すと、次のコンポーネント選択画面に進みます。
4. コンポーネントの選択(GPU別)
「Select Components」という画面が表示されます。自分のGPUに合わせて以下のように設定してください。
NVIDIA GPU(RTX 20/30/40/50シリーズ)の場合

- ☑ Install main DLSS Enabler files (game dependant) → チェックON
- ⦿ Install as a version.dll file (optimal compatibility) → 選択
- ☐ Enable support for AMD and Intel GPUs → チェックOFFのまま
NVIDIAユーザーは上の設定でOKです。「Enable support for AMD and Intel GPUs」には絶対にチェックを入れないでください。NVIDIA環境で有効にすると、かえって不具合の原因になります。
AMD GPU / Intel GPUの場合

- ☑ Install main DLSS Enabler files (game dependant) → チェックON
- ⦿ Install as a version.dll file → 選択
- ☑ Enable support for AMD and Intel GPUs → チェックON
- ⦿ Install NVIDIA Runtime files into game directory → 選択
AMD/Intelの方にチェックを入れると、その下の「Install XeSS 1.3 and FSR 3.1 replacements」や「Install Nukem9 DLSSG-to-FSR3 module」が自動的に有効になります。これらはDLSSをAMD/Intel GPUで動かすための必須コンポーネントです。
5. インストール方式について
メインのDLSS Enablerファイルには4つのインストール方式があります。基本は一番上のversion.dllを選んでおけば問題ありません。
| 方式 | 使いどころ |
|---|---|
| version.dll | 最も互換性が高い。まずはこれを選ぶ |
| winmm.dll | version.dllで動かない場合の代替 |
| ASI plugin | ゲームが大量のMODを使っている場合 |
| dxgi.dll | 上記すべてで動かないときの最終手段 |
もし選んだ方式でゲームが起動しない、DLSSオプションが表示されないといった症状が出たら、一度アンインストールしてから下の方式を試していく流れになります。
6. オプションファイルについて
画面下部の「Install optional files」はトラブルシューティング用です。最初はチェックを入れなくて大丈夫です。不具合が出た場合に触る項目なので、初回インストールでは無視してOKです。
選択が完了したらNextを押してインストール実行。これでインストール作業は完了です。
7. ゲーム内での設定
ゲームを起動したら、グラフィック設定でDLSS関連の項目を有効にします。DLSS Enablerが正しく動作していれば、本来表示されないはずのDLSSオプションが選択できるようになっています。
MFGの倍率変更やAdaptive Frame Generationの設定は、ゲーム中にCtrl+`(チルダキー)を押すことでデバッグコンソールやオーバーレイメニューが表示される場合があります。バージョンによってUIの挙動が異なるため、うまく表示されない場合はInsertキーでOptiScalerのオーバーレイを試してみてください。
8. アンインストール方法
DLSS Enablerを削除したい場合は、インストールしたゲームフォルダ内にある関連ファイル(version.dll、nvngx.dll、dlss-enabler.ini、OptiScaler.ini、dlssg_to_fsr3_amd_is_better.ini など)を手動で削除するか、DLSS Enablerが提供するアンインストーラーを使います。ゲームが起動しなくなった場合は、Steamなどで「ゲームファイルの整合性を確認」すれば元に戻せます。
9. 注意事項
- ウイルス対策ソフト:DLL注入(DLLインジェクション)という手法を使うため、一部のウイルス対策ソフトが誤検知する場合があります。誤検知の場合は例外設定に追加してください
- AMD / Intel GPU使用時のレイトレーシング:「Enable support for AMD and Intel GPUs」を有効にすると、NVIDIAランタイムファイルが導入されます。その影響でゲーム内のレイトレーシング(RT)機能と競合し、RTが動作しなくなることが報告されています。RTを復旧するにはDLSS Enabler自体をアンインストールする必要があるため、フレーム生成とレイトレーシングの併用は現時点では難しいと考えてください
- RTX 50シリーズ:ネイティブのDLSS MFGとの競合が起きる場合があるので、MOD経由のMFGと本家MFGのどちらを使うか整理しておきましょう
使うときの注意点
DLSS Enablerは非常に便利なツールですが、いくつか注意すべきポイントがあります。
ベースフレームレートが低いと映像が崩れる
これは何度も強調していますが、一番大事なポイントです。マルチフレーム生成はAIが前後のフレームから中間フレームを「予測」して作る仕組みなので、元のフレームが少なすぎると予測の精度が落ちます。
具体的には、ベースが20FPS程度の状態でMFG X4をかけると、数字上は80FPSになりますが、映像はチラつきやブレだらけで快適とは言えない状態になります。理想はベース60FPS以上、最低でも40〜50FPSは確保してから使うのが鉄則です。
あくまでMODであるリスク
DLSS EnablerはNVIDIA公式のツールではなく、コミュニティ製のMODです。そのため以下のリスクがあります。
- ゲームのアップデートで動かなくなる可能性がある
- オンラインゲームではアンチチート(不正対策ソフト)に引っかかる可能性がある
- 特定のゲームとの相性問題が発生することがある
ネイティブDLSS MFGとの品質差
RTX 50シリーズでネイティブに動作するDLSS MFGは、NVIDIAのTensor Coreを使ったハードウェアアクセラレーションで処理されます。DLSS Enablerはソフトウェア的にこれをエミュレーションしているため、同じ倍率でも画質や安定性に差が出ます。「本物のDLSS MFGと全く同じ体験が得られる」とは思わないようにしましょう。
対応タイトルの条件
DLSS Enablerの基本機能(アップスケーリングや2xフレーム生成)は、ゲームがDLSS 2またはDLSS 3にネイティブ対応していれば動作します。
ただしマルチフレーム生成(X3以上)を使うには、さらに条件が加わります。そのゲームがDLSS 4のマルチフレーム生成にネイティブ対応している必要があるんですよね。DLSS 3のフレーム生成(1フレーム追加)にしか対応していないタイトルでは、MFGは有効にできません。
現時点(2026年4月)ではCrimson Desert、Resident Evil Requiem、Samsonなどの対応が確認されています。
また、X5やX6モードについては、ゲーム側のStreamline(NVIDIAのフレームワーク)のバージョンが一定以上に更新されている必要がある場合があります。すべてのDLSS 4 MFG対応タイトルでX5/X6がそのまま動くとは限らない点にも注意してください。
まとめ
DLSS Enablerは、RTX 50シリーズを持っていなくてもマルチフレーム生成という最新技術を疑似的に体験できる非常にユニークなMODツールです。
特にRTX 20/30シリーズのユーザーにとっては、FSR 3.1の2倍フレーム生成では届かなかった高フレームレート領域に手が届く可能性がある、魅力的な選択肢になります。RTX 40シリーズのユーザーも、本来使えないはずのX5やX6モードを試せるという点で大きなメリットがあります。
ただし忘れてはいけないのは、DLSS Enablerは魔法のツールではないということ。ベースフレームレートが低ければ映像は崩れますし、MODゆえの不安定さもあります。自分のGPU性能に見合った倍率で、無理のない範囲で活用するのが賢い使い方です。
「FSR 3.1のフレーム生成は使ってるけど、もうちょっとフレームレート伸ばせないかな…」そんな風に思っているなら、一度試してみる価値は十分にあると思いますよ。




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