はじめに
最近のゲームでよく耳にする「アップスケーリング技術」。
これは、低い解像度の映像を高解像度に見せるための技術です。
単なる拡大ではなく、AIや高度なアルゴリズムを使って「本来あるはずの情報」を予測し、画像を再構築します。
たとえば、実際には1080pで動いているゲームでも、アップスケーリングを使えば4K並みの映像でプレイでき、しかもGPU負荷は軽いまま。
1. DLSS 4とは?

DLSS(Deep Learning Super Sampling) は、NVIDIAが開発したAIベースのアップスケーリング技術です。
GPUの負担を減らしながら、より高解像度な映像を再現する仕組みで、最新のDLSS 4ではAIによるフレーム生成がさらに進化しています。
AIが前後のフレームを解析して「中間フレーム」を生成し、映像を滑らかに補完する――それがDLSS 4の大きな進化ポイントです。
DLSS 4の特徴
- AIによるフレーム生成(Multi Frame Generation)
DLSS 4では、AIが1枚の実フレームの間に最大3枚の補完フレームを生成します。
これにより、実際の描画よりも最大約4倍のフレームレートを実現できます。
- 高解像度対応
4Kやそれ以上の高解像度環境で特に効果を発揮。
画質を維持したまま、GPUへの負荷を抑えられます。
- 対応GPU
RTXシリーズ専用の技術で、最新のRTX 50シリーズ(Blackwell)はMulti Frame Generationに対応。
RTX 40シリーズまでは「Frame Generation」までが上限です。
DLSS対応GPUと機能比較
| 対応GPU | Super Resolution | Frame Generation | Multi Frame Generation |
|---|---|---|---|
| RTX 20 / 30 シリーズ | 対応 | 非対応 | 非対応 |
| RTX 40 シリーズ | 対応 | 対応 | 非対応 |
| RTX 50 シリーズ | 対応 | 対応 | 対応 (実フレ1+AIフレ3) |
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2. FSR 4とは?

FSR(FidelityFX Super Resolution) は、AMDが開発するアップスケーリング技術です。
以前のFSRシリーズはAIを使わない軽量設計でしたが、FSR 4ではついにAI・機械学習(ML)を採用。
AMD独自のAIモデルにより、動きのある映像でもノイズを抑え、より精細な描画を実現します。
FSR 4の特徴
- AIベースのアップスケーリング
AMD独自のMLアルゴリズムを導入し、従来よりもディテール保持と動体補正が強化。
ゴーストや残像を抑え、滑らかな映像を描きます。
- AIフレーム生成に対応
DLSS 4と同様にAIによるフレーム生成が可能。
フレームレートを維持しつつ、描画品質を高める設計です。
- 対応GPU
公式対応はRadeon RX 9000シリーズ(RDNA 4)のみ。
一部ユーザーの検証では、旧世代(RDNA 3など)でも動作報告がありますが、公式サポート外です。
- クロスプラットフォーム展開
AMDは、FSRを引き続きオープンソースとして提供しています。
PS5 Proなどの次世代機向けに「PSSR」と統合される可能性も報じられていますが、正式発表はまだです。
FSR 4対応GPU(2025年時点)
| 対応GPU | アーキテクチャ | 対応状況 |
|---|---|---|
| Radeon RX 9000 シリーズ | RDNA 4 | 正式対応 |
| Radeon RX 7000 シリーズ | RDNA 3 | 動作報告あり(非公式) |
| NVIDIA / Intel GPU | – | 非対応(旧FSRのみ互換) |
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3. DLSS 4 vs FSR 4:どちらが優れているのか?
どちらが“上”というよりも、使う環境や目的で最適解が変わるのが現実です。
両者の特徴を整理してみましょう。
ゲーム用途での比較
| 比較項目 | DLSS 4 | FSR 4 |
|---|---|---|
| 画質 | ◎ AI補完が自然で高精細 | ○ 改善されたがDLSSよりややソフト |
| フレーム生成 | ◎ 高精度・安定性が高い | ○ 遅延やノイズが出るケースあり |
| 対応環境 | RTX限定 | Radeon RX 9000限定(拡大予定) |
| 対応タイトル数 | 多い | 少ない(初期段階) |
クリエイティブ用途での比較
| 比較項目 | DLSS 4 | FSR 4 |
|---|---|---|
| 解像度維持 | ◎ フレーム生成の品質が高い | ○ 若干ソフトだが自然な描画 |
| GPU負荷 | ◎ 軽減効果が大きい | ○ 軽量設計だが精度はDLSS優勢 |
| 対応ソフト | OBS / Broadcast等で利用 | 今後の統合に期待 |
ただし、現時点でクリエイティブ用途の公式比較データはまだ少ないため、
用途やソフトによって結果が異なります。
4. まとめ
DLSS 4とFSR 4はどちらも「AIによるアップスケーリング+フレーム生成」という方向に進化しています。
ただし、設計思想と対応環境には明確な違いがあります。
| 比較軸 | DLSS 4(NVIDIA) | FSR 4(AMD) |
|---|---|---|
| 技術基盤 | AI+Tensorコア | AI+ML(RDNA 4) |
| 対応GPU | RTX 20〜50 | Radeon RX 9000 |
| フレーム生成 | 最大3枚のAI補完(体感4倍) | 対応(品質は改善中) |
| 互換性 | NVIDIA専用 | オープンソース設計 |
| コンソール展開 | 未定 | 検討中・報道あり |
最終的に選ぶべきは、「どんなGPUを使っていて、どんな体験を求めるか」。
- 高画質・安定・滑らかさを求めるなら DLSS 4
- AMD環境で将来性や柔軟性を重視するなら FSR 4
技術を知ることが、最適な選択への第一歩です。
「どちらが優れているか」よりも、自分の目的に合う技術を選ぶことが大切です。


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