はじめに
グラフィックボードを選ぶとき、「VRAMが多い方がいい」とよく言われますよね。
確かにVRAMは、映像処理の作業机のようなもので、容量が足りないとデータを置ききれず描画が詰まってしまいます。
でも実は──もうひとつ、見逃されがちな重要な要素があります。
それが 「メモリ帯域幅(Memory Bandwidth)」 です。
ちょっと小難しく感じるかもしれませんが、計算式なんかはそうなんだ~程度で理解しておけば問題ないかと思います!
めっちゃ簡単に言えば数字が大きいほうがいい!という理解でOKです
帯域幅とは何か?

GPUはVRAMにあるデータを読み書きしながら、テクスチャや影、エフェクトなどをリアルタイムで処理しています。
このときに重要なのが、「データをどれだけ速くやり取りできるか」
この速度を表すのが、メモリ帯域幅です!
イメージで言うと──
VRAMが「作業机の広さ」だとすれば、帯域幅は「その机に資料を運ぶ通路の広さ」
いくら机が広くても、通路が細ければ資料の出し入れに時間がかかります。
つまり、VRAM容量(GB)だけでは性能は語れないんです。
描画の滑らかさには、「机の広さ」と「通路の太さ」両方が効いてきます。
帯域幅の計算式
帯域幅は次の式で求められます。
メモリバス幅(bit) × メモリ転送速度(Gbps) ÷ 8 = 帯域幅(GB/s)
たとえば──
- 128bit × 16Gbps = 約256GB/s
- 256bit × 16Gbps = 約512GB/s
バス幅が倍になれば、データ転送量も単純に倍。
つまり「通路を広げる=一度に運べるデータ量が増える」ということなんです。
RTX 5000シリーズで何が変わったのか?

2025年現在、NVIDIAの最新アーキテクチャ「Blackwell(RTX 5000シリーズ)」では、
新メモリ規格・GDDR7 が採用されています。
従来のGDDR6X(最大23Gbps)に比べ、GDDR7は最大32Gbpsと約1.4倍の高速化。
同じバス幅でも理論帯域幅が大幅に広がりました。
たとえば、256bit構成のGPUで比較すると──
- GDDR6X(23Gbps) → 約736GB/s
- GDDR7(30Gbps) → 約960GB/s
つまり、バス幅を変えずに速度だけで200GB/s以上の差が出るわけです。
この進化によって、RTX 5000世代では高解像度・高負荷の描画でもデータ転送がボトルネックになりにくくなりました。
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「バス幅」「クロック」「帯域」の関係
製品ページなどでよく見かける「128bit」「256bit」といった数字。
これは単なる飾りではなく、「同時にデータを通せる線の本数」を意味します。
たとえば:
- 128bit → データを128本の線で同時転送
- 256bit → 倍の256本で転送
そこに「メモリクロック(動作速度)」が掛け合わさることで、最終的な帯域幅が決まります。
つまり、バス幅が広いほど有利なのは間違いありませんが、
今の時代はメモリ速度(GDDR7)で狭いバス幅を補うことが可能になっています。
キャッシュと圧縮技術の進化

GPUの性能を上げるには、単純に「VRAM(メモリ)」との通路を広げるだけでは足りません。
いくら通路を広くしても、行き来の回数が多ければそれだけ時間も電力も食うからです。
そこで近年のGPUは、「そもそも何度も取りに行かない」方向に進化しています。
つまり、同じデータを効率よく再利用する仕組みを取り入れているんですね。
代表的なものが、この2つ…
- AMDの「Infinity Cache」
GPUの内部に大容量キャッシュを搭載し、よく使うデータを手元にストックしておく仕組み。
これにより、VRAM(外部メモリ)にアクセスする回数が大幅に減り、実質的な帯域効率が大きく向上します。
たとえばRX 7900 XTXでは、実際の384bit GDDR6構成にも関わらず、キャッシュによってそれ以上のパフォーマンスを引き出しています。 - NVIDIAの「メモリ圧縮技術(Memory Compression)」
こちらはデータをGPU内部で“可逆圧縮”し、より少ない転送量で同じ情報を扱えるようにする仕組み。
データを小さくまとめて送ることで、メモリ帯域を実質的に拡張する効果があるんです。
これはLossless(可逆)方式なので、画質や演算結果が劣化することはありません。
こうした技術のおかげで、GPUは物理的な帯域を広げるだけでなく、アクセスを賢く減らす方向にも進化しています。
つまり、“通路を広げる”よりも“行き来を減らす”ほうが効率的——そんな時代になったということです。
もちろん、物理的な帯域幅(メモリの速さやバス幅)も依然として重要です。
しかし、Infinity Cacheやメモリ圧縮のような仕組みがあることで、GPUは限られた帯域でもより多くのデータをさばけるようになっています。
この「効率の最適化こそが現代GPUの進化の鍵」なんですね。
GDDR7で強化されたRTX 5000シリーズの構成

2025年10月時点で、公式・メーカー情報から確認できるRTX 5000シリーズの仕様は以下の通りです:
- RTX 5090:32GB GDDR7/512-bit(28Gbps)→ 約1.8TB/s
- RTX 5080:16GB GDDR7/256-bit(30Gbps)→ 約960GB/s
- RTX 5070 Ti:16GB GDDR7/256-bit(28〜30Gbps)→ 約896〜960GB/s
- RTX 5070:12GB GDDR7/192-bit(28Gbps)→ 約672GB/s
- RTX 5060 Ti:8〜16GB GDDR7/128-bit(28Gbps)→ 約448GB/s
- RTX 5060:8GB GDDR7/128-bit(28Gbps)→ 約448GB/s
この通り、下位モデルでもGDDR7の採用によって十分な帯域を確保しています。
従来のRTX 4000番台では帯域不足を感じた構成(128bitなど)でも、
GDDR7によってデータ転送がスムーズになり、カクつきが起きにくくなりました。
VRAMが多くても帯域が細いと性能が出ない
「VRAMが多い=性能が高い」と思われがちですが、実際にはそうとも限らないんです。
たとえば、RTX 5060 Tiは16GBのVRAMを積んでいても128bit構成。
一方で、RTX 5070は12GBでも192bit構成。
帯域はおよそ1.5倍の差があり、結果としてWQHDや4K環境では5070のほうが安定します。
これは、「容量より通路の太さが大事」な典型例です!
帯域幅が狭いと起こること

帯域が不足すると、GPU内でデータの渋滞が起きます。
これによって──
- テクスチャの読み込みが遅れる
- 一瞬だけfpsが落ちる
- 高解像度設定で描画がカクつく
といった症状が現れます。
VRAM不足と似ていますが、根本は「データを処理しきれない」ことが原因です。
GPU選びで意識すべき3つのポイント

- VRAM容量(GB):置けるデータ量
- メモリバス幅(bit):通路の太さ
- メモリ世代(GDDR6X or GDDR7):通路の速度
フルHD中心なら128bitでもGDDR7で十分。
WQHDや4K環境では192bit〜256bit構成を選ぶと安定します。
まとめ:帯域幅は「データの流れ」を支える縁の下の力持ち
VRAMは作業机
帯域幅はその机に資料を運ぶベルトコンベアの速さ
どれだけ広い机でも、コンベアが遅ければ仕事は進まない。
逆に机が少し狭くても、流れが速ければ効率は落ちません。
そして2025年の今、GDDR7の登場によって「通路を広げる」から「通路を速くする」時代へと移行しました。
次にグラボを選ぶときは、
「VRAMが何GBか」だけでなく、
「帯域(GB/s)」「バス幅(bit)」「メモリ世代(GDDR7)」にも注目してみてください!
その1枚が、あなたのゲーム体験を確実に一段上へ引き上げてくれるはずです*
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