はじめに
ゲームのグラフィック設定で「レイトレーシング」という項目を見かけたことはありますよね?
オンにすると「映り込みが綺麗になる」「影が自然になる」といった説明が添えられている機能です。
正直なところ、遠い過去の私も最初は「なんとなく凄そうだけど重そう」程度の認識でした。
しかし実際に試してみると、雨上がりの路面が艶やかに光ったり、ガラスへの映り込みがリアルになったりと、一目で分かる変化に驚かされます…!
一方で、フレームレートが落ちたり、設定項目が多すぎて戸惑ったりして、利用を諦めてしまう人も多いはず…。
そこでこの記事では、レイトレーシングが何をしているのかを、実際のゲーム画面の見え方と結びつけて解説します。
難しい数式は抜きにして、仕組みのイメージを掴むことを優先してい解説していきます!

レイトレーシングは「光の通り道」を計算する描画技術

レイトレーシングを一言で表すと、「光の通り道」を追跡(トレース)して、画面の明るさや映り込みを決める描画方法です!
ここで言う「光の通り道」とは、例えば次のような現象のことです ▶
- 暗い部屋でライトを点けると、壁や床に反射した光が周囲をほんのりと明るくする。
- ガラスや金属の表面に、周囲の景色が映り込む。
- 光源の位置によって影の伸び方が変わり、くっきりした影やぼんやりした影ができる。
現実では当たり前の現象ですが、ゲームでこれらを再現するのは意外と大変です。
昔からゲーム制作では、処理を軽くするために「反射なら反射用」「影なら影用」の『近道(擬似的な処理)』をたくさん用意して、見た目を作ってきました。
レイトレーシングは、そうした「近道」を増やすのではなく、現実の光のルールに近い手順でまとめて計算しようという技術です。
そのため、映像の整合性が格段に向上するんです!
映り込みに画面外の物体が正しく入ったり、影の辻褄が合いやすくなったりするのはこのためなんですよね。
なぜ処理が重いのかについて

レイトレーシングが重くなりやすい理由は、光の通り道を追うたびに「画面内のどこに当たるか」を何度も調べる必要があるからです。
ゲームの世界には、見えている以上に多くの物体がありますよね?
壁の凹凸、遠くの小物、草木、看板、室内の家具など、それら全てに対して「この光線はどこに当たり、次はどこへ跳ね返るか」という判定を繰り返します。
しかもゲームは、1フレームの描画時間がシビアです。
60fpsなら、理論的にはわずか約16.7msの間に1枚の絵を作り続けなければなりません。
そのため現実のゲームでは、画面全体ではなく、効果が目立つ部分に絞ってレイトレーシングを使うことが一般的なんです。
設定項目が「反射」「影」「グローバルイルミネーション」などに分かれているのは、こうした負荷調整の事情があるからです。
初心者が一番理解しやすいのは「反射」

レイトレーシングの効果が最も分かりやすいのは「反射(リフレクション)」です。
雨の路面、ガラス、金属の床や車体など、映り込みが見どころになる場面で威力を発揮します。
従来の技術(レイトレーシングなし)での反射は、画面に映っている情報だけで作られることが多いため、カメラに映っていない物体は反射の中にも登場しません。
そのため、視点を動かすと映り込みが消えたり、不自然に切り替わったりすることがあります。
一方、レイトレーシングによる反射は、画面外も含めて光線の当たり判定を行うため、こうした不自然さが解消されます。
オンにした瞬間に「あ、ここが変わった」と実感しやすいのがこのタイプですね。
「影」こそがリアリティの正体!

次は「影(シャドウ)」です。
反射ほど派手ではありませんが、違いに気づくと最も没入感を高めてくれる要素でもあります。
例えば、木漏れ日やフェンス越しの影、細かい物が重なってできる影の輪郭、根元は濃く遠くは淡くなる影のグラデーション…。
こうした「空気感」の表現は、従来の近道的な手法では限界が出やすい部分でした。
レイトレーシングの影は、光源から見て遮蔽物があるかどうかを光線で確かめるため、影が「そこに実在している感じ」が強く表現できます。
屋外では分かりにくいこともありますが、室内や夜のシーンでは明確な差となって現れます。
「グローバルイルミネーション」は部屋の雰囲気を変える

最後に「グローバルイルミネーション(GI)」についてです。
これは「部屋全体の明るさの回り込み」をイメージすると分かりやすいでしょう。
例えば、赤い壁がある部屋では、反射した光で白い床がほんのり赤みを帯びて見えますよね?
暗い場所でも、光源の近くはじんわりと明るさが広がります。
こうした、空間の雰囲気や空気感に関わる部分が劇的に変わります。
ただし、GIは品質を上げるほど負荷が高くなりやすい項目でもあります。
まず「反射」か「影」から試してみて、マシンパワーに余裕があればGIを試す、という順序がおすすめだったりします。
リアルタイムで使う以上、「ノイズ対策」が前提

もう一つ、レイトレーシングの話で避けて通れないのが「ノイズ」です。
レイトレーシングや後述するパストレーシングは、計算回数を間引くと画面に粒っぽいザラつき(ノイズ)が出やすくなります。
本来は光線の本数を増やせば画質は安定しますが、ゲームには計算時間の余裕がありません。
そのため実際には、少ない情報でも綺麗に見せるための「デノイズ(ノイズ除去)」処理や、前のフレームの情報をうまく混ぜ合わせる技術とセットで動いています。
これを知っておくと、オンにしたのに少しザラついて見えたり、動いた時だけ残像のような揺れが出たりしても、「技術的な特性だな」と納得して整理できるはずです。
設定に迷ったらこれ! 「見たい景色」で決める賢い選び方

どの項目をオンにするか迷ったら、最初は難しく考えなくて大丈夫です。
「自分がよく遊ぶゲームの、どの見どころが好きか」で決めましょう。
- 雨の路面、夜景、車、ガラス張りの建物が好き:反射(リフレクション)が効果的です。
- 暗い室内やライトの多いシーンが印象的:影(シャドウ)とグローバルイルミネーションが効いてきます。
逆に、映り込みが少ないゲームや、明るい屋外が中心のゲームでは、見た目の差が出にくいこともあります。
その場合は重さだけが目立ってしまうこともあるので、無理に全てオンにする必要はありません。
パストレーシングとの違いについて

最後に、混乱しやすい「パストレーシング」についても少し触れておきます。
- レイトレーシング:光線を使う描画技術全般の呼び名。ゲームでは「反射だけ」「影だけ」といった部分的な採用が多いです。
- パストレーシング:光が何回も跳ね返る経路まで、全体をまとめてシミュレーションする手法。より統一感のある光になりますが、計算量は膨大になります。
最近のゲームでは、パストレーシングが特別な「高品質モード」として用意されていたり、強力な最適化技術と組み合わせて実装されていたりします。
まとめ:レイトレーシングは「見た目の辻褄」を合わせる技術
レイトレーシングは、光の当たり方や映り込みを、現実に近いルールで計算する技術です。
現在のゲームでは、全てを置き換えるのではなく、反射や影など効果的な部分に絞って使われています。
オンにして「重い」と感じた時は、レイトレーシングが悪いというより、「リアルタイムで光を真面目に計算している分、仕事量が増えている、頑張ってくれている」と捉えると納得しやすいと思います。
まずは反射か影、どちらか一つを試してみて、変化が楽しめるゲームでその魅力を体験してみてください!






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