海外の大手PCメディア「Tom’s Hardware」が、AMDとIntelのデスクトップ向けCPUを9つの項目で真正面から比較する記事を公開しています。
価格、スペックと機能、ゲーム性能、生産性(マルチタスク)、ドライバサポート、消費電力、オーバークロック、チップセット・ソケット、セキュリティ——この9項目を一つずつ検証して「どっちが勝ち?」と判定していくスタイルです。結果はAMD 3勝、Intel 3勝、引き分け2つ。スコアだけ見ると、意外なほど互角でした。
| 比較項目 | 勝者 |
|---|---|
| 価格 | AMD |
| スペックと機能 | AMD |
| ゲーム性能 | AMD |
| 生産性(マルチタスク) | Intel |
| ドライバサポート | Intel |
| 消費電力 | AMD |
| オーバークロック | Intel |
| チップセット・ソケット | AMD |
| セキュリティ | 引き分け |
でも、中身を読んでいくと「互角」という印象とはだいぶ違う景色が見えてきます。今回はこの記事を読んで感じたことを、初心者の方にも分かるようにまとめてみました。
元記事はこちら:Tom’s Hardware – Intel vs AMD: Which CPUs Are Better in 2026?
ゲーム性能 — X3Dの独走がここまでとは
記事を読んで最初に目を引いたのが、ゲーム性能の差の大きさです。
| CPU | コア/スレッド | 9800X3D比 |
|---|---|---|
| Ryzen 7 9800X3D(AMD) | 8コア/16スレッド | 基準 |
| Core i9-14900K(Intel) | 24コア/32スレッド | 約27%遅い |
| Core Ultra 9 285K(Intel) | 24コア/24スレッド | 約38%遅い |
AMDのRyzen 7 9800X3Dが、Intelの最上位であるCore Ultra 9 285Kに対して約38%も高速というデータが出ています。前世代フラッグシップCore i9-14900Kと比べても27%上回っている。
ここで面白いのが、9800X3Dは8コア16スレッドの「ミドルクラス」で、285Kは24コアの「フラッグシップ」だということ。コア数が3倍近いCPUに対して、8コアのCPUがゲームでは圧勝している。これが3D V-Cache(大容量キャッシュ)の力です。
ゲーム中、CPUはメモリからデータを取ってくる作業を繰り返しています。このとき、CPUのすぐそばにある「キャッシュ」にデータがあれば超高速で処理できるけれど、なければメインメモリまで取りに行くので遅くなる。X3Dシリーズはこのキャッシュを大量に積むことで、ゲームに必要なデータをCPUのすぐ手元に置いておける。だからコア数が少なくても速い、というわけです。
魔理沙8コアが24コアに勝つって、なんか詐欺みたいだぜ。コアが多い方が強いんじゃないのか?
霊夢ゲームの場合は「コアの数」より「データをどれだけ速く取り出せるか」の方が重要なのよ。キャッシュが多いと、いちいちメモリまでデータを取りに行かなくて済むから、結果的に処理が速くなる。コア数で勝負するのは動画編集とか3Dレンダリングみたいな、大量のコアを同時に使える作業の話ね
魔理沙じゃあゲームだけなら、高いCPU買わなくてもいいってことか?
霊夢そういうこと。ゲーム目的なら、フラッグシップに手を出すより9800X3Dクラスを選んだ方が賢い選択よ
Arrow Lake Refreshとして登場したCore Ultra 7 270K PlusやCore Ultra 5 250K Plusは、従来のArrow Lakeから大きく改善されてゲーム性能が底上げされています。特に250K Plusは約200ドルという価格帯で、AMDの非X3DモデルであるRyzen 5 9600Xと互角のゲーム性能を出しているので、このクラスは競争が激しい。
ただ、X3Dモデルが相手になると、やっぱりIntelは太刀打ちできないのが現状です。
価格 — CPU単体じゃなく「トータル」で考えるべき
記事ではAMDが価格面で勝利と判定されています。
ただ、個人的に思うのは「CPUの値段だけ比べても意味がない」ということ。自作PCはCPU、マザーボード、メモリ、電源、クーラーなど全部セットで考える必要があります。
2026年現在、DDR5メモリの価格が高騰しています。AMDの最新プラットフォーム(AM5)もIntelの最新(LGA1851)もDDR5必須なので、ここのコストは同じ。でも、AMDには旧世代のAM4プラットフォームという選択肢がまだ残っていて、Ryzen 5 5600X3DのようなDDR4対応のゲーミングCPUが安く手に入る。
一方で、IntelのRaptor Lake世代(第12〜14世代)もDDR4対応マザーボードが選べるので、旧世代ならIntelにも安く組める道はあります。しかも最近の動きとして、IntelのVPであるRobert Hallock氏が「Raptor Lakeは当社の戦略の大きな柱。今後も十分な供給を続ける」と明言しており、14世代のCPUと700シリーズマザーボードの生産を継続する方針が示されています。
さらに、IntelはLGA1700を延命するために2027年初頭に向けてRaptor Lakeのさらなるリフレッシュ版を計画しているという情報も出ています。
つまり、旧プラットフォームの延命に関してはAMDだけでなくIntelも動き出しています。DDR5高騰の今、DDR4が使えるプラットフォームの価値は両社とも認識しているということでしょう。
| 項目 | AMD(AM4/AM5) | Intel(LGA1700/LGA1851) |
|---|---|---|
| DDR4対応 | AM4のみ | LGA1700 |
| DDR5対応 | AM5 | LGA1700/ LGA1851 |
| 旧プラットフォームの新CPU | Ryzen 5 5600X3D等 | Raptor Lake継続生産(+追加リフレッシュの噂) |
| ソケット寿命 | AM4:2016年〜現役 / AM5:2027年以降も対応 | LGA1700:2021年〜継続中 / LGA1851:Nova Lakeで終了見込み |
要するに、「最新世代で組むならコスト差は小さい」「旧世代まで視野に入れると両社とも選択肢がある」というのが現状です。ただ、X3D対応のゲーミングCPUが旧ソケットで手に入るという点ではAMDが一歩リードしています。
消費電力 — 初心者にこそ地味に大きいメリット
記事ではAMDが消費電力部門で勝利。TSMC 4nmプロセスとZen 5アーキテクチャの組み合わせが、電力効率で明確にリードしているという評価です。
IntelもArrow Lakeで消費電力を大幅に改善しましたが、それでもAMDの方が「同じ性能を出すのに必要な電力が少ない」という状況は変わっていません。
これ、ベテランユーザーには当たり前の話ですが、初心者にとってはかなり大事なポイントです。
消費電力が低いということは、発熱も少ないということ。発熱が少なければ、冷却に必要なクーラーのグレードを下げられる。電源ユニットも小さくて済む。つまり、パーツ選びで「冷却不足で落ちる」「電源容量が足りない」というトラブルに遭いにくくなります。
初めての自作PCで一番怖いのは「組んだけど動かない」「動いたけど不安定」というパターン。消費電力が低いCPUは、そのリスクを構造的に下げてくれます。
オーバークロック — Intelが唯一はっきり勝っている項目
記事の中でIntelが明確に勝利しているのがオーバークロックです。
IntelのCPUはP-core(高性能コア)とE-core(高効率コア)それぞれの動作クロックを個別に調整でき、電圧も細かく制御できる。いわば「マニュアルチューニングの自由度が高い」設計です。
一方、AMDのX3Dモデルは9800X3Dで初めてPBO(Precision Boost Overdrive)に対応しましたが、手動で細かく追い込む余地はIntelほどありません。3D V-Cacheが熱に敏感なため、無理にクロックを上げるとキャッシュにダメージを与えるリスクがあるからです。
ただ、ここで正直に言いたいのは——初心者にオーバークロックはほぼ関係ありません。
オーバークロックは「定格で十分な性能が出るCPUを、さらに数%絞り出す」ための行為。これが楽しい人はもちろんやればいいですが、初めて自作PCを組む人が気にすべき項目ではありません。定格で安定して動くことの方がずっと大事です。
だから、この項目でIntelが勝っていても、初心者が「じゃあIntelにしよう」と判断する理由にはならないと思います。

ソケットの将来性 — 個人的にここが一番重要だと感じた
記事ではチップセット・ソケットのサポートでAMDが勝利。そしてこれが、個人的に一番大きいポイントだと感じました。
AMDのAM5ソケットは、少なくとも2027年までのサポートが公式にアナウンスされています。Zen 4からZen 5まで同じソケットで使えていて、今後Zen 6世代も対応する可能性がある。
つまり、今AM5マザーボードを買えば、次の世代のCPUに載せ替えるときにマザーボードを買い直す必要がない可能性が高い。
一方でIntelは、Arrow Lake世代でLGA1851ソケットに移行したばかりですが、2026年後半に登場予定のNova Lakeでは早くもLGA1954という新ソケットに移行します。つまり、今LGA1851でマザーボードを買っても、次世代では使えません。
これはコストの問題に直結します。CPUだけ載せ替えるなら2〜4万円で済むけれど、マザーボードごと買い替えとなると追加で2〜3万円かかる。初心者が「次はCPUだけアップグレードしよう」と思ったとき、AMDなら可能だけどIntelだと丸ごと組み直しになるかもしれない。
長く使いたい人、段階的にアップグレードしていきたい人にとって、この差はかなり大きいと思います。
内蔵GPU — AMDの圧勝、でも自作ゲーマーには優先度低め
内蔵グラフィックス(iGPU)の性能では、AMDが圧倒的に勝っています。
AMDのRyzen 8700G・8600GはPhoenixアーキテクチャのAPUで、グラボなしでも1080pで軽めのゲームが遊べるレベルの内蔵GPUを搭載しています。IntelのArc内蔵グラフィックスも世代を追うごとに改善されてはいますが、AMDのGシリーズには及びません。
ただ、これは「グラフィックボードを別に買わない」前提の話です。自作PCでゲームをガッツリやりたい人は、ほぼ確実にグラボを別途購入するので、内蔵GPUの性能差は正直あまり気にならないところ。
とはいえ、「グラボが届く前にとりあえず動かしたい」「初期設定やBIOS画面を映すのに内蔵GPUがあると便利」という場面は実際にあるので、あって困るものではありません。

まとめ — 3勝3敗でも「初心者にとっての答え」はシンプル
Tom’s Hardwareの記事は非常にフェアな比較で、スコアの上ではAMDとIntelは互角です。
でも、初心者が一番気にすべきポイント——ゲーム性能、消費電力(=冷却や電源の安心感)、ソケットの将来性——この3つでAMDが勝っているのは事実。逆にIntelが勝っているオーバークロックやドライバサポートは、初心者にとっては優先度が低い項目です。
なので「初めての自作で迷ったらAMD寄りで考えるのが無難」というのが、この記事を読んだ上での率直な感想でした。
ただし、Intelも黙っているわけではありません。Arrow Lake Refreshで投入されたCore Ultra 5 250K Plusは約200ドルで非常にコスパが良く、AMDの非X3DモデルであるRyzen 5 9600Xと互角以上に戦えるCPUです。
さらに、2026年後半にはNova Lakeという次世代アーキテクチャが控えていて、ここでゲーム性能の巻き返しを図る可能性もあります。
どちらか一方を信仰するのではなく、「今この瞬間、自分の用途と予算に合うのはどっちか」で冷静に選ぶのが正解です。AMDが強い時期もあれば、Intelが巻き返す時期もある。CPUの世界はそういうものです。
参考記事: Tom’s Hardware – Intel vs AMD: Which CPUs Are Better in 2026?



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