Ryzen 7 5700Xは、長らく「コスパの良い定番CPU」として語られてきました。
自作PC界隈でも、BTOのラインナップでも、8コア16スレッドを手頃な価格で買えるCPUとして名前が挙がり続けてきたモデルです。
ただ、2026年現在の状況を見ると、以前と同じ感覚でおすすめしていいのか、正直迷うところがあります。
結論から言うと、新規で自作PCを組むCPUとして、5700Xを積極的な第一候補にする理由は、以前よりかなり弱くなっています。
一方で、すでにAM4環境を持っている人の延命や、価格の安いBTOパソコンという文脈では、条件次第でまだ選択肢になります。
なぜそうなるのか、順を追って見ていきます。
Ryzen 7 5700Xはなぜ定番CPUになったのか
まず、5700Xがここまで長く支持されてきた理由を整理してみます。
8コア16スレッドを手頃な価格で購入できた
5700Xは、上位モデルの5800Xと同じZen 3・8コア16スレッド構成でありながら、クロックとTDPを抑えることで価格を下げたモデルです。
8コア16スレッドというスペックも、当時は5700Xが選ばれる理由のひとつでした。
AM4+DDR4でPC全体を安く組みやすかった
5700XはAM4ソケットに対応しています。
AM4は長期間使われてきたプラットフォームなので、対応するマザーボードやDDR4メモリの流通量が多く、比較的安く手に入りました。
CPU単体の価格だけでなく、マザーボードとメモリを含めたPC全体の総額を抑えられる、という点が支持された大きな理由です。
2万円台前半だった頃は価格と性能のバランスが良かった
そして何より、以前の5700Xは新品で22,000円台から購入できました。
この価格であれば、最新世代よりゲーム性能で多少劣っていても、価格を考えれば十分納得できました。
「型は少し古いが、値段を考えれば十分」というのが、5700XがコスパCPUと呼ばれてきた理由です。
※アリエクスプレスでは1万円台前半で購入できました
2026年のゲーム性能では世代の古さが浮き彫りに
ここからは、現在の視点で5700Xの立ち位置を見ていきます。
まず押さえておきたいのが、ゲーム性能面での世代差です。
新しい世代の6コアCPUに負けるゲームも珍しくない
Zen 4世代のRyzen 5 7500Fと5700Xを比較したベンチマークでは、7500Fが5700Xを上回る結果が出ています。
差の大きさはタイトルや検証条件によって変わりますが、AMDとの相性が良いとされる黒神話: 悟空では、RTX 5070との組み合わせで5700Xが7500Fより10〜17%低く、RTX 5060との組み合わせでは13〜18%低いという検証結果があります。
一方で、Final Fantasy XIVのように差が小さいタイトルもあります。同じ検証ではRTX 5070で最大約6%、RTX 5060のフルHDで約5%程度の差にとどまり、WQHD以上ではさらに縮まります。
タイトルによって差はありますが、新しい6コアCPUが5700Xをゲーム性能で上回るケースは珍しくありません。
CPUの世代ごとの性能差を一覧で確認したい場合は、こちらも参考にしてみてください。
8コア16スレッドでもゲームでは大きな優位にならない
ここで初心者の方に伝えておきたいのが、コア数とゲーム性能は必ずしも比例しない、という点です。
多くのゲームは、CPUの全コアをフルに使い切るようには作られていません。
それよりも、1コアあたりの処理速度、つまりクロックの高さやアーキテクチャの新しさの方が、ゲームのフレームレートには影響しやすい傾向があります。
7500Fは6コア12スレッドですが、新しいZen 4アーキテクチャを採用しているため、8コア16スレッドの5700Xより高いゲーム性能を出せる場面がある、というのはこの構造によるものです。
霊夢8コアの方が多いのに、6コアに負けることがあるのね
魔理沙どういうことだ? 数が多い方が速いんじゃないのか
霊夢ゲームは全部のコアを使い切るわけじゃないの。だから、コアの数より1つあたりの処理の速さが影響しやすいのよ
魔理沙なるほどな。世代が新しい方が、1コアあたりの性能が上がってるってことか
それでも以前は安さという大きな武器があった
ここまで見ると、5700Xはもう性能で見劣りするだけのCPUに聞こえるかもしれません。
ただ、以前の5700Xには、性能の古さを補って余りある武器がありました。
価格です。
新品22,000円台という価格であれば、ゲーム性能で1割前後の差があったとしても、当時の価格なら十分に許容できる範囲でした。
さらにAM4対応のマザーボードとDDR4メモリは価格が安定していたので、PC全体の総額でも有利でした。
「最新世代には劣るが、その分安い」という、価格性能比のバランスが取れていたわけです。
この頃の5700Xが定番CPUと呼ばれていたのは、正当な評価だったと思います。
ところが現在の5700Xは3万円台まで上昇
問題は、この前提が崩れつつあることです。
2026年8月時点で確認できる5700Xの新品価格は、おおむね32,000円前後です。
以前の23,000円前後から比べると、約1.4倍、率にして約39%の値上がりです。
背景として、DDR5価格の上昇を受けてDDR4やAM4への需要が高まっているという動きがあります。
ただし、5700X単体の価格上昇がこの需要によるものだと断定できる情報までは確認できていません。
ここではっきりさせておきたいのは、5700Xの性能が急に落ちたわけではない、ということです。
ゲーム性能はこれまでと変わっていません。
変わったのは価格です。
価格が上がったことで、これまで性能の古さを打ち消していた「安さ」というメリットが、以前ほど大きくなくなっています。
新規自作で5700Xを選ぶメリットは?
ここで押さえておきたいのが、CPU単体の価格関係です。
2026年8月時点で、7500Fの単体価格はおおむね27,000円台から購入できます。
5700Xの32,000円前後と比べると、7500Fの方がCPU単体では安いことになります。
ゲーム性能で7500Fが上回り、しかもCPU単体価格でも安い。
この時点で、CPUだけを見れば5700Xを選ぶ理由はかなり限られてきます。
ただし、話はここで終わりません。
プラットフォーム全体で考える必要があるからです。
5700X+AM4マザーボード+DDR4メモリという構成と、7500F+AM5マザーボード+DDR5メモリという構成を比べる場合、DDR5メモリの価格が現在も高止まりしていることを考えると、総額ではAM4構成の方が安くなるケースがあります。
つまり、「AM4は今でも安くPCを組める」という点自体は否定できません。
ただし、ここは分けて考える必要があります。
AM4プラットフォームが安いことと、5700XというCPUがお買い得であることは、別の話です。
AM4の安さを活かしたいなら、5700Xより価格の安い5600のような下位モデルを検討する余地もあります。
DDR4とDDR5の価格差や、メモリ選びの考え方については、こちらで詳しく解説しています。
→ PCメモリの選び方完全ガイド|容量の目安・DDR4とDDR5の違い・デュアルチャネルの基本を解説
「AM4だから安い」という理由だけで5700Xを選ぶのではなく、CPU単体の価格と性能、そしてプラットフォーム総額を分けて比較したうえで判断した方がいいと思います。
なぜBTOでは今でも5700X搭載モデルが多いのか
ここが、この記事でしっかり触れておきたい論点です。
2026年現在も、5700X搭載のBTOパソコンは市場に多く残っています。
CPU単体で見ると価格性能比が以前より弱くなっている5700Xが、なぜBTOでは今も採用され続けているのか。
理由として確認できる事実は、AM4+DDR4という組み合わせによって、完成品としての価格を抑えやすい、という点です。
DDR5メモリの高騰が続く中、DDR4を使えるAM4プラットフォームは、BTOメーカーにとって総額を抑える手段になり得ます。
ここで大事なのは、CPU単体のコスパと、完成品PCとしてのコスパは別物として評価すべきだということです。
たとえば、同価格帯で5700X搭載モデルと7500F搭載モデルを比べたとき、5700X搭載モデルの方が一段上のGPUを積めているケースがあれば、ゲーム用PCとしては合理的な選択になり得ます。
逆に、GPUのグレードが変わらないのに5700X搭載モデルの方が高い、という組み合わせであれば、その構成を選ぶ理由は乏しくなります。
BTOを検討する場合は、CPU単体の型番だけでなく、CPU、GPU、メモリ容量、ストレージ、完成品の総額をセットで比較して、同価格帯の他の構成と見比べることをおすすめします。
BTOメーカーごとの構成の考え方や、パーツ情報の公開度については、こちらでまとめています。
→ BTOパソコンは大手だけじゃない|自作視点で選ぶ、こだわり派BTOメーカー6社比較【2026年版】
霊夢CPU単体だと微妙でも、完成品なら話が変わるのね
魔理沙同じ値段でグラボが一段上なら、そっちの方がゲームは快適ってことか
霊夢そういうこと。だからBTOはCPUの型番だけ見ちゃダメなの。構成全体と値段をセットで比べないと
魔理沙なるほどな。パーツ単位の話と、完成品の話は分けて考えるんだな
Ryzen 7という名前だけで性能を判断しない
BTOのスペック表でRyzen 7 5700Xと書かれていると、Ryzen 5より上位に見えるかもしれません。
ただし、CPUのグレード名は世代をまたいで比較するためのものではありません。
5700Xより新しいRyzen 5の方が、ゲーム性能で上回るケースもあります。
BTOを選ぶときはRyzen 7、Ryzen 5という名称だけでなく、CPUの世代と実際のゲーム性能まで確認した方がいいでしょう。
2026年でも5700Xを選んでいい人
ここまでの内容を踏まえて、5700Xがまだ選択肢になる人を整理します。
- すでにAM4マザーボードとDDR4メモリを持っている人
- CPU交換だけでPCを延命したい人
- 5700X搭載BTOが、同価格帯の競合機より明確にお買い得な場合
- AM4+DDR4でPC全体の価格を抑えるメリットが、他の要素より大きい場合
これらに当てはまる場合は、5700Xは今でも合理的な選択肢になり得ます。
CPU交換だけでPCを延命する場合、AM4環境ではX3Dシリーズという選択肢もあります。
→ Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Edition徹底検証 4年前のCPUが9800X3Dより高い理由とAM4ユーザーの買い替え価値
パーツ交換の優先順位そのものを整理したい場合は、こちらも参考になります。
→ 自作PCアップグレードの優先順位とコスパ最強のパーツ交換ガイド|症状別ボトルネックの見極め方
一方で、CPU単体を3万円前後で新規購入し、これから5700Xを中心にPCを組もうとしている人については、7500Fをはじめとした他のCPUとも比較したうえで判断することをおすすめします。
CPU単体では7500Fの方が安く、ゲーム性能でも上回る以上、以前ほど無条件におすすめできる状況ではなくなっています。
まとめ|5700Xを昔と同じ感覚でコスパCPUとは…
Ryzen 7 5700Xは、使えないCPUではありません。
8コア16スレッドという構成は今でも一定の実用性がありますし、AM4+DDR4という組み合わせがPC全体の価格を抑える手段になる場面も残っています。
ただ、新しい世代のCPUとの間にゲーム性能の差があること、そしてCPU単体の価格が以前より4割近く上昇していることを踏まえると、以前のように「とりあえず5700Xを選んでおけばコスパがいい」と無条件に勧められる状況ではなくなっています。
既存のAM4環境を持っている人や、価格の安いBTO完成品という文脈では、まだ十分に選択肢になります。
そこは用途と、実際に提示されている価格を見て、そのつど判断するのが確実だと思います。


