RTX 4090のAI性能が約2倍になる。そんな興味深いニュースが海外から飛び込んできました。
2026年10月25日、海外PCメディアVideoCardzが、GeForce RTX 20・30・40シリーズの一部AI演算にかかっていた制限を解除する技術について報じました。
しかも、GPUのパーツを交換するわけでも、Tensor Coreを増やすわけでもありません。
開発者が公開した非公式ツールを使い、GPU内部の設定を変更することで、これまで制限されていた演算能力を引き出すというものです。
実際にRTX 4090では、特定のAI演算の処理能力が165.6TFLOPSから331.6TFLOPSへ、ほぼ2倍に向上しています。
ただし、ゲームのfpsやローカルAIの動作速度まで2倍になるわけではありません。
今回は、なぜ同じGPUで性能が上がるのか、どのGPUで動作が確認されているのか、実際のAI処理ではどのくらい速くなるのかを整理していきます。
RTX 20・30・40シリーズのAI演算性能が最大2倍に?

今回話題になっているのは、GPU-Unlockと呼ばれるオープンソースのプロジェクトです。
もともとはRTX 30シリーズを対象に開発が進められていましたが、その後、RTX 40シリーズやRTX 20シリーズにも研究が広がりました。
対象になるのは、NVIDIAのGPUに搭載されているTensor Coreという演算回路です。
Tensor Coreって何?
GeForce RTXシリーズには、ゲームの映像などを処理するCUDAコアに加えて、AIの計算を高速化するTensor Coreが搭載されています。
特に、AIの学習や推論で頻繁に行われる行列演算を高速に処理するための回路です。
ローカルAIで文章を生成したり、画像生成AIを動かしたりする場面でも活用されています。
今回の発見は、このTensor Coreの一部の演算が、GPUの設定によって制限されていたというものです。
制限を変更することで、特定の計算を今までより高速に実行できることが確認されました。
なお、CUDAとTensor Coreの違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
→ CUDAとは何かをわかりやすく解説|GPUをAI・動画編集に活用するNVIDIA独自技術
どうして同じGPUなのに性能が上がるの?
GPUの性能は、CUDAコアやTensor Coreの数、動作クロック、メモリ帯域幅など、さまざまな要素で決まります。
ただし、内部の回路が持っている能力を、常に最大限まで使っているとは限りません。
今回の技術では、Tensor Coreに特定の計算命令を発行する速度を制御する設定が変更されています。
例えば、工場に10台の機械があっても、そこへ仕事を渡すペースが制限されていたら、機械の能力を十分に活用できませんよね。
今回の変更は、その仕事を渡すペースを引き上げるようなものです。
魔理沙つまり、RTX 4090には最初からもっと速く計算できる能力があったってことか?
霊夢特定の演算については、そういうことね。ただし、GPUのすべての処理が制限されていたわけではないのよ
魔理沙じゃあ、これでゲームも2倍速くなるって話ではないんだな
この制限解除では、GPU内部の設定レジスタを変更します。
NVIDIAの通常のドライバーがGPUを初期化する前に処理するため、対応する実装ではVBIOSを書き換える必要がありません。
ただし、低レベルのファームウェア処理を利用する実験的な方法であり、一般的なGPU設定の変更とはまったく違います。
また、FP16やBF16などの演算形式によって結果が異なります。
簡単に言えば、AIが数字を計算するときのデータ形式の違いで、今回高速化するのは主に特定の形式を使った行列演算です。
RTX 4090やRTX 3090 Tiはどれくらい速くなった?
開発者が公開した実測データを見てみましょう。
| GPU | 測定内容 | 変更前 | 変更後 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| RTX 4090 | FP16命令処理 | 165.6 | 331.6 | 約2.0倍 |
| RTX 3090 Ti | BF16行列演算 | 87.5 | 157.4 | 約1.8倍 |
単位:TFLOPS
出典:GPU-Unlock(RTX 30) / GPU-Unlock Ada(RTX 40)
※RTX 4090は特定の命令を発行できる速度、RTX 3090 Tiは実際の行列演算の処理能力を測定しています。測定内容が異なるため、両GPUの性能を直接比較するための表ではありません。
RTX 4090では、ほぼ2倍の数値を記録しています。
RTX 3090 TiでもBF16行列演算が約80%高速化しました。
また、RTX 3060やRTX 3070、RTX 3080、RTX 3090などでも、対象となる演算の高速化が報告されています。
さらにRTX 2080 Tiでも成功例があります。ただし、一部の初期検証に使われたのはVRAMを22GBへ改造した特殊な個体です。
旧世代のGeForceにも、特定のAI計算でこれだけの性能向上の余地があったというのは興味深いところですね。
RTX 4090の実際の行列演算では伸び幅が小さい
ここで注意したいのが、最初の2倍という数字です。
RTX 4090の追加検証では、実際のAI計算で利用されるcuBLASというライブラリーを使った行列演算も測定されています。
その結果、FP16の行列演算では約12〜34%の性能向上でした。
BF16についても、約16〜20%向上した条件がある一方、ほとんど改善しなかった条件もあります。
つまり、演算命令を発行する能力が2倍になっても、実際の計算速度が2倍になるとは限りません。
計算の種類や処理するデータ量、GPUの電力制限などによって結果が変わるためです。
RTX 20・30・40シリーズの基本的なGPU性能や世代ごとの違いについては、こちらの記事で比較しています。
→ GPU性能比較表2026年版|NVIDIA RTXシリーズとAMD RXシリーズ
ローカルAIや画像生成AIも2倍速くなる?
今回の発見で気になるのは、実際にAIソフトを使ったときにどのくらい速くなるのか、というところでしょう。
ローカルAIでは文章の読み込みが速くなる場合がある
LlamaやQwenなどのローカルAIでは、大きく分けて2つの処理があります。
ひとつは、入力された文章や資料を読み込む処理です。これはPrefillと呼ばれています。
もうひとつは、その内容をもとに回答を1トークンずつ生成していくDecodeという処理です。
RTX 30シリーズの開発者報告では、Prefillが約14〜36%高速化した例が確認されています。
例えば長い資料を読み込ませるような場面では、処理が速くなる可能性があります。
一方、回答を順番に生成するDecodeでは、ほとんど性能が変わらない場合があります。
これは、計算能力よりもVRAMからデータを読み出す速度が制限になりやすいためです。
魔理沙計算が2倍速くなるなら、AIの回答も2倍の速度で出てくるんじゃないのか?
霊夢そう単純ではないのよ。AIの処理には計算能力だけでなく、メモリからデータを取り出す速さも関係するからね
魔理沙計算する部分だけ速くなっても、ほかの部分が追いつかなければ全体は速くならないってことか
実際、RTX 4090で量子化されたMoEモデルを実行した検証では、ほとんど改善が見られなかった例もあります。
ローカルAIで必要になるGPU性能やVRAM容量については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
→ ローカルAI用PCの選び方|用途別に必要なGPU・VRAM・メモリの目安を解説
また、GPUのメモリ帯域幅についてはこちらも参考になります。
→ GPUのメモリ帯域幅とは?VRAMの容量だけでは性能が語れない理由
画像生成AIでも性能向上の可能性
Stable Diffusionなどの画像生成AIでは、行列演算を大量に行う処理があります。
開発者の報告では、一部の拡散モデル関連の計算でも高速化が確認されています。
そのため、対応する演算を使用する画像生成AIなら、画像を生成する時間が短くなる可能性があります。
ただし、FLUXなどのすべての画像生成モデルが同じ割合で高速化することを示す実測ではありません。
また、今回の技術ではVRAM容量が増えるわけでもありません。
計算能力の一部を引き上げる技術であって、VRAM不足を解消するものではないという点は押さえておきたいところです。
VRAM容量の役割についてはこちらでも解説しています。
→ VRAMとは?グラボ選びで知っておきたい役割と容量の考え方
ゲームのfpsは速くなる?
今回の制限解除で、通常のゲーム性能が2倍になるわけではありません。
対象は一部のTensor Core演算であり、ゲームの3D描画全体を高速化する技術ではないためです。
DLSSもTensor Coreを活用しますが、今回の報告だけでDLSSを使うゲームのfpsが改善するとは判断できません。
ゲーム向けのアップスケーリング技術と、今回の演算制限解除は分けて考える必要があります。
→ アップスケーリング徹底解説|DLSS・FSR・XeSSの違いとモード選びの基本
自分のGeForceでも使える?対応GPUと注意点
今回の技術はオープンソースで公開されていますが、誰でも簡単に使える状態ではありません。
2026年10月26日時点で、動作が報告されている主なGPUは以下のとおりです。
| 世代 | 主な動作報告 |
|---|---|
| RTX 20シリーズ | RTX 2080 Ti |
| RTX 30シリーズ | RTX 3060、3070、3080、3090、3090 Ti |
| RTX 40シリーズ | RTX 4090、一部のRTX 4070・4080系など |
| RTX 50シリーズ | 確認された解除方法なし |
※動作報告は一部のGPUや特定の環境によるものです。同じ型番のすべての製品で動作するという意味ではありません。RTX 40シリーズには実験的な対応も含まれます。
特に注意したいのは、主にLinux向けの実装として開発が進んでいることです。
Windowsでも成功例は報告されていますが、特定のGPUやPC構成に依存する実験段階です。
さらに、GPUの通常の設定範囲を超える処理を行うため、起動に失敗する可能性もあります。
RTX 20シリーズ向けの開発者は、Tensor Coreへの負荷が増えることでハードウェアを損傷する可能性についても警告しています。
今回の結果を見て、自分のGPUでもすぐに試してみたいと思った方もいるかもしれません。
しかし、現時点では一般ユーザーが普段使いのPCへ導入することはおすすめしません。
興味がある場合は、開発プロジェクトの公開情報や検証結果を確認する程度にとどめておくのが無難でしょう。
まとめ:旧世代GeForceにはまだ性能向上の余地がある
今回のGPU-Unlockは、旧世代GeForceの可能性を改めて感じさせる興味深い技術です。
RTX 4090では特定のTensor Core命令の処理能力が約2倍になり、RTX 3090 TiでもBF16行列演算で約80%の性能向上が確認されました。
ただし、実際のAI処理では改善幅が小さいこともあり、LLMの回答生成やゲームのfpsが2倍になるわけではありません。
また、対応GPUや動作環境には制限があり、低レベルの設定変更によるリスクも残されています。
現時点では実験的な技術ですが、すでに所有しているGPUのAI処理性能をさらに引き出せる可能性が示されたこと自体に価値があります。
今後、さまざまなGPUやローカルAIソフトで検証が進み、実用面でも大きな改善が確認されるのか注目したいところです。


